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    インタビュー

    明細書発行は患者にとっても新たな文化
    国民の意識も大きく変わるはず

    花井十伍

    花井十伍
    中医協委員、全国薬害被害者団体連絡協議会代表世話人、連合「患者本位の医療を確立する連絡会」委員。

    22歳の時に血友病と診断され、血液製剤のない時代から血液製剤の技術革新を体験。輸入血液製剤によりHIVに感染した。1994年大阪HIV薬害訴訟原告団に加入し、幅広い活動を展開。これまで数々の審議会の委員としても活躍しており、現在、中央社会保険医療協議会(中医協)の支払い側委員を務めている。

    進めよう、医療の民主化・透明化

    ——患者が診療明細書を受け取り、保管することの意義は?

    花井: 何よりも医療の中身を患者が知ることに価値があると思います。1990年代頃まで、患者を不安にさせない保護主義により、例えば点滴に何が入っているかも知らずに治療がおこなわれていました。カルテは5年しか保存されないため、長期的に服用しているC型肝炎などは、30年後に気づいても記録が残っていません。自分の受けた医療をきちんと知り、そして記録として残しておくことが重要です。明細書の発行は、国民が医療政策を決めていく土台となります。診療内容を国民が知ることで、「医療の民主化・透明化」が進むと思います。

    ——まだ明細書を発行していない医療機関については?

     確かに、中には明細書をいらないという患者もいますが、だからといって発行しないという話にはなりません。発行は当たり前のことだという認識が定着しないといけません。医療機関でも患者が明細書を有効に活用できる取り組みを進めてほしいです。話は少しずれますが、医師は社会の一員としてもう少しコスト感覚を持ってほしいと思います。適切で最善の治療というのは理念として理解しますが、反面、コスト意識はなくなりかねません。勤務医はレセプトを見る機会が少なく、薬の値段を知らないことがあります。本当にそれでよいのか、みんなで考えてみたいと思います。

    めざすは100%の発行

     一方、私のこれまでの経験から、患者に対しても求めるものがあります。それは、もう少し診療内容に関心を持って、治療とその治療の価格がふさわしいかなど、ふだんから考える習慣を身につけるべきだということです。自分の医療費にどれだけのお金がかかっているのかを、日本の国民として知らないとしたら残念なことです。例えば、血液製剤などの価格も5,000円、20,000円とさまざまですが、研修会などで講演すると、全額公費負担の患者の親はほとんど現状を知りません。自分や家族の診療内容を知ることで、医療について議論できる土台ができます。患者間でも情報を共有化して取捨選択することが大切で、そのためには難病患者や公費負担者にも明細書を発行すべきだと考えます。

    ——連合の取り組みへの期待は?

     連合は、長い年月をかけて明細書発行に向けた取り組みを推進してきました。2010年度の診療報酬改定で、積年の課題であった原則無償発行の義務づけを勝ち取りました。今後は、同じ中医協支払い側である保険者とも連携し、さらに明細書の価値を創造してほしいと思います。「明細書は専門用語があって分かりにくい」などの意見も患者から聞かれますが、それは当然のことです。明細書発行は患者にとって「新しい文化」ですから、徐々に理解を深めていくことで国民の意識は大きく変わっていくはずです。国民の身近なものとなる運動に期待しています。
     次の2012年度改定では、明細書発行が免除されている医療機関も義務化に対応できる環境をつくる必要があります。すべての医療機関で患者が明細書を受けとることができるよう、明細書発行率を限りなく100%に広げていきたいと思います。

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